こんにちは、円山アカデミーの飯島です。
前回は、中学生が「話す」ことが苦手というのは正しくない、というお話でした。
今回は語彙力が大事!ということをお伝えしたいと思います。
研究によれば、1989年から始まったオーラル・コミュニケーション(聞く・話す)重視の政策によって、逆に高校入学時の英語力は低下した、とされています。これはいわゆる「ゆとり教育」により、そもそもの授業時数が減ったことも大きな原因だと考えられます。
授業時数が減ったところに、コミュニケーションの授業も入れるとなると、どうしても「読む・書く」が犠牲になりますよね。
下の表をご覧ください。
2000年代まで、学習する語彙数が徐々に減少してきたのがわかると思います。
また、英語の授業時数が週3回⇒4回に増えた2008年に中学校での語彙数が300語も増えていることから、語彙力の低下が英語力低迷の要因の一つである可能性が高いと言えそうです。
考えてみれば当然ですが、単語力がなければ聞いたり話したりすることもできないわけですから、重視していたはずのコミュニケーション力も身につかないわけですね。
そこで今回(2017)の改正を見てみると、まさに劇的な変更が加えられています。
今回の4000~5000語という水準は1960~70年代の水準と同じくらい。
中学卒業まで2200~2500語という語彙数は、これまでの高校生の語彙数に迫っています。
新学習指導要領でいかに語彙力が重視されているか、おわかりいただけるでしょうか。
ところで、お隣の韓国は1997年、中国は2001年から、小学3年生以上に対して英語教育が導入されています。
また、中国は都市部では小学1年生から英語を学びますし、他のアジア諸国でも小学1年生からという国は意外と多いです(台湾・タイなど)
英語に関しては日本のはるか先を行くこれらの国でも、小学校の段階から読み書きを含む4技能の教育が重視されているようです。
さらに、高校までの語彙数は韓国で7000~8000、中国で6000語程度という調査結果もあります。
これは一部のトップ校での話だと思いますが、一時期の日本の倍とは驚きですね!
小学校からの英語の読み書きに反対意見もみられますが、隣国ではもう20年も前の話なのですね。
今回の学習指導要領改訂は、むしろ遅すぎるくらいなのかもしれません。語彙力は4技能全てにかかわる力ですから、バランスの良い英語力を身につけるには、小学校のうちから単語の読み書きも大事にしていくべきではないでしょうか。
参考文献
英語教育に関する調査報告書 大森不二雄
http://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/cmsfiles/contents/0000391/391984/01siryo1.pdf
日本の英語教育における語彙指導の問題を考える 長谷川修治氏
https://ci.nii.ac.jp/els/contents110009511103.pdf?id=ART0009972286
中国における英語教育の現状――日本の英語教育を再考するために―― 宮内敦夫2005